【解説】Cloudflare大規模障害でX・ChatGPTが世界的ダウン
Cloudflareの大規模障害によってXやChatGPTを含む世界中のサービスが同時多発的にダウンした原因と背景をわかりやすく解説。
2025年11月18日夜、全世界のインターネットが一時的に「崩壊」しました。 その原因は、AWSでもAzureでもなく、Cloudflare――インターネット配信のデータ量の2〜3割を担う「ネットの黒子」と呼ばれるCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)大手です。
Cloudflareのマシュー・プリンスCEOは障害の収束後、ブログで「2019年以降で最悪の障害となりました。インターネットに多大な迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます」と陳謝しました。
この記事では、
- 何が起きたのか
- なぜCloudflareが落ちたのか
- CDNとは何か
- この障害が示す教訓
をまとめて解説します。
1. 何が起きた?
2025年11月18日夜、Cloudflareのグローバルネットワークが内部サービスの劣化を起こし、多数のサイトが一斉にダウンしました。障害は約3時間続き、その間、世界中のユーザーが多くのウェブサービスにアクセスできなくなりました。
ウェブ上の不具合情報を利用者から集計する「ダウンディテクター」には210万件以上の報告が寄せられました。

影響を受けた主なサービス:
- X(旧Twitter)
- ChatGPT
- Spotify(スポティファイ)
- Zoom
- Canva
- League of Legendsのログイン
- そして皮肉なことに DownDetector までダウン
2. 原因は?
今回の障害はCloudflare側の設定ミスがネットワークを構成する機器に広がり、正しく機能しなくなったことが原因です。
具体的には、以下のような流れで障害が発生しました:
- Cloudflare側で設定変更が行われた
- その設定ミスがネットワーク機器に波及
- 125カ国超で展開するCloudflareのサービスが連鎖的に機能不全に
- 世界中のWebサービスに影響が広がった
Cloudflareは以下のような重要なサービスを提供しているため、**単一障害点(Single Point of Failure)**となっています:
- DNS
- CDN
- DDoS防御
- Bot対策
- CAPTCHA
同社のCDNは世界の幅広いネットサービスが利用する「ネットインフラ」になっているため、一度障害が発生すると影響は広範囲に及びます。
3. CDNとは何か?
CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)は、通信インフラの負荷を減らす「ネットの黒子」です。
CDNの仕組み: 原本となるサイトやコンテンツを遠隔地の複数サーバーに保存することで、利用者のアクセスを分散させ、通信速度を高めています。
実例:Netflix 世界で3億人の有料会員を抱えるNetflixでは、人気タイトルが公開4日間で視聴回数6800万回に達するほどアクセスが集中します。そこで動画データを世界各地のサーバーにあらかじめコピーしておくことで、利用者とサーバーの通信距離を短くし、アクセスを分散。動画の読み込みがスムーズになります。
CDN市場の成長: 調査会社ルーツアナリシスによると、CDN市場は2025年に242億ドル(約3兆8000億円)、2035年までに年平均15.6%で急成長が続く見込みです。SNSや人工知能(AI)、ネット通販などのサービス普及を背景に通信量は拡大を続けています。
主要プレーヤー:
- Cloudflare:125カ国超でサービス展開、ネット配信のデータ量の2〜3割を担う
- 米アカマイ・テクノロジーズ
- 米ファストリー
4. 実際のエラー画面
ユーザーが遭遇したエラー画面:

X(旧Twitter)上でも、Cloudflare起因のエラーが多数報告されました。
5. この事故が示した教訓
① CDNの単一障害点リスク
ネットサービスへの影響力が高まることで、社会的な責任も重くなります。通信量増大への対策として導入が広がる半面、障害が広範囲に及ぶリスクが浮き彫りとなりました。
世界中のサイトがCloudflare経由で守られているため、 「Cloudflareが落ちる=インターネットが落ちる」 という構造が明らかになりました。
② 設定ミスの波及
今回の障害は、悪意ある攻撃ではなく設定ミスという人的エラーが原因でした。しかし、その影響は125カ国超のネットワーク機器に波及し、3時間にわたって世界中のサービスに影響を与えました。
③ 企業・開発者への示唆
- 単一プロバイダ依存の見直し
- リスク分散(マルチCDN / DNS)
- 設定変更時の段階的ロールアウトと検証プロセスの強化
④ Cloudflareの社会的責任
東京地裁は11月19日、出版大手4社がCloudflareに損害賠償を求めた訴訟で同社に約5億円の支払いを命じました。漫画の海賊版サイト運営者にサービスを提供したCloudflare側の法的責任が争われ、裁判所は同社サービスが著作権侵害行為を容易にしたと認めました。
これまでもCDNは海賊版サイト運営の温床になっているとの批判がありました。ネットインフラとしての影響力が高まる一方で、その社会的責任も問われています。
まとめ
- 発生日時:2025年11月18日夜、約3時間にわたる障害
- 原因:Cloudflare側の設定ミスがネットワーク機器に波及
- 影響規模:210万件以上の不具合報告、X・ChatGPT・Spotifyなど多数のサービスがダウン
- CloudflareのCEO:「2019年以降で最悪の障害」と陳謝
- CDNの役割:世界のネット配信のデータ量の2〜3割を担う「ネットの黒子」
- 市場規模:2025年に約3兆8000億円、年平均15.6%で成長見込み
- 浮き彫りになった課題:単一障害点リスク、設定ミスの波及、社会的責任の重さ
参考文献・出典
- 日本経済新聞「Cloudflareの障害、ネット揺るがす 通信網の『黒子』に死角」2025年11月22日
- Cloudflare公式ブログ - CEO Matthew Prince による障害報告
- DownDetector - 障害報告集計データ
- Roots Analysis - CDN市場調査レポート
ヴィンセント
青山学院大学経済学部在学中。楽天、LINEヤフーでのインターン経験あり。 文系からエンジニアの道に進む中で、環境構築やエラー解決に苦労した経験から、 同じように悩む人の役に立ちたいと思い、このサイトを立ち上げました。




